子育てをしていると、
自分は現役ではあるのだけれど、
一方でもう引き渡す側でもあるのだと
感じることが多々ある。
子どもたちのエネルギーがすごすぎて、
冗談ではなく、命を削って、
彼らと過ごしている気がしてくる。
そんな子どもたちに、
いつか読ませたい詩がある。
吉野弘さんの「奈々子に」である。
この「奈々子に」は、
吉野さんの娘に向けての
願いが込められているものなのだが、
わたしは、この詩に
とても共感しているのだ。
赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。
お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。
はじまりでは、
母の頬の赤さが子どもに
いってしまったということから、
日々あたえ続ける育児の
側面が描かれているようだ。
もちろん、子どもから得るものは、
それはそれはたくさんあるのであるが。
唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。
続いて、子どもに多くを期待しないことが、
やんわりと伝えられる。
期待に応えようとすること自体を
完全に否定しているわけではないが、
自分を押し殺してまでというか、
すべてが他人のためのように
なってしまうことに、
警鐘を鳴らしているのだろう。
では、あげたいものは何なのか。
詩の中で、
言い方を変えて繰り返される。
お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるのにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ
まったくその通りなのである。
健康と、自分を愛する心を
子どもたちにあげたいと思う。
でも「愛する」なんて、
なにやらわかりやすいようで、
わかりにくい。
それについては、
別のブログで書けたら書きたいが、
ひとまずここでは、
言葉のままということにする。
大人になってからの方が、
後悔とか苦労とか挫折とか、
いろいろなことがあって、
すんなりいかないと
感じることもある。
それだけじゃ生きれない。
でも、それがあったら、
いくらかしなやかになれると
信じている。
わたしは、この詩が載っている詩集を
子どもたちの近くに置いておく。
あわよくば、
自ら手に取ってもらえるように。
