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消耗しない人間関係のために「やりすごす」~菅野仁『友だち幻想』〈1〉~


学校や職場、地域など、
人の集まるところに身を置くと、
自分とは違う振る舞い方、
考え方や感じ方をする人とも、
いっしょに過ごすことになります。

したがって、
「気の合わない人」と一緒にいる作法を
真剣に考えなければならないというのが、
この本を通じての著者の意見です。

たとえば学校では、「みんな仲良く」という
発想になりがちですが、
そもそもたまたま同じ地域に住んでいて、
学校に通っている
偶発的な集まりにすぎないと。

そこで気の合う仲間に
出会えるというのは、
運が良かっただけだから、
ムリにみんなの輪に入らなくてもいい。

「気の合わない相手とも、
お互い傷つけあわずに、時間と空間を
とりあえず共有できればいい」と
いうことなのです。

子どもが、
きらいな友だちがいると言ってきたら、
「その子にもいいところはあるから、
仲良くできるよ」というのではなく、
「もし合わないんだったら、
近づかずにぶつからないようにしよう」と
はたらきかけることが大切だとあります。

つまり、共にいることを
「やりすごす」のです。

「愛せない場合は通り過ぎよ」という
ニーチェの言葉が紹介されていましたが、
言い得て妙だと思いました。

ただ、あくまでも、
子どもが打ち明けてきたときに
助言するくらいでしょうか。

はじめから相手に近づかないというのは、
相手がどんな人なのかも、
気が合うのか合わないのかも
わからないですし、
気の合う友だちとだって、
衝突したり、ケンカしたりしながら、
人づきあいというものを
学んでいくのだから。

相手が見えてからの、
「やりすごす」というのは、
賢いやり方ですね。

日常にも取り入れたい視点です。


参考文献 菅野仁 著「友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える」、ちくまプリマ―新書、2008年