急に涼しくなって、
慌てて長袖などを引っぱり出してきた。
土手には彼岸花、夜風に乗って
聞こえる祭りの太鼓と鐘の音。
秋はひっそりと訪れていたのだった。
眠くて寒い朝、自分を生き返らせるのは、
あたたかいスープである。
スープは偉大だ。
母校に行く機会があり、
講義棟の間にそびえる山があった。
地には土色の葉が敷かれている。
キャンパスへ向かう大通りを行くと、
中央分離帯に黄色の銀杏並木、
両側の歩道に紅色の百日紅。
風景の記憶が驚くほどに抜けている。
物理的にも「前しか」見ていなかったのは、
若かった自分だった。
前も、後ろも、上も下も、
四方八方が見えることが、
年を重ねるということなのだろうか。
少なくとも私にとっては。