2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧
新緑のころ、彼に話しかけた。彼は図書館で本を読んでいた。同じ授業で見かけたことがあり、話してみたいと思っていた矢先だった。連絡先を交換した。CDを借りた。二人でビリヤードに行った。ビリヤードの前に何を食べたか、どうしても思い出せない。彼に恋…
パンデミックを経て、ある友人とは公園で会うようになった。お昼前に落ち合い、食事をしながら話して別れていたが、お店はいろいろと制約があるから行かなくていいのでは、と意見が合った。朝一で集合して、お昼前には帰る。暑かったり寒かったり雨だったり…
夏が暑さによって洗濯物を乾かすなら、秋のそれは風なのだろう。ベランダから見える川沿いの木々が、葉を落とし始めている。これから少しずつ葉が離れていく。離れた葉を掃く。通りかかった人と挨拶を交わす。夏は青々とした葉を広げて家への日差しを防いで…
学生のころ、試験の前に、たまに徹夜などをしていたものだ。夏か冬かは忘れたけれど、一人暮らしの古いマンションで一人、その日も私は徹夜の覚悟であった。深夜二時、そろそろ集中力も切れてきて、もう寝たいけれど、まだ課題が終わらなくて、寝たら単位を…
自分の顔を見れば、自分の調子は、だいたいわかる。良いときは、目に意思があり、肌も滑らかで、口角は上を向いている。そうでないときは、目の力は弱く、肌はくすみがちで、あらゆるパーツが重力に従順である。朝、身支度するときに顔を見て、ああ、疲れて…
ある人に、お礼を言う機会があった。立ち話で時間がなかったのもあるけれど、上手くしゃべろうとか、相手に喜んでもらおうなんて考えず、思いのままに発した言葉が、驚くほど鮮明に耳に入ってきた。伝えたのはこちらの方なのに、自分が素直で無心だったから…
使える余地と好みが合えば、誰かの使っていたものを買うことがある。CD、書籍、家すらも。先日、スピッツのアルバム「三日月ロック」を購入した。中古品だ。帯はなかったけれど、折り目のないブックレットにアルバムを引っさげての当時のツアーパンフレット…
「何かに集中しているときは幸せだ。何も考えなくていいから。」ある少年が呟いていた。あなた、まだ十年も生きていないよね。でも、その気持ちを持ち続けてほしい。”幸せ”とは、誰もの関心事だけれど、口に出すと廃れていく気がして人と話すことが少ない。…
気の進まないやりたくないことは、誰にでもある。私的なことならやらなくても支障はないが、公的となるとそうもいかない。とはいえ良い効果もあるからと、適度に自分を納得させて取りかかる。やり始めても、まあ煩わしい。煩わしいからやりたくないのだし、…
山、と思っていた出来事が終わった。迎えるまでも、最中も、その後もせわしなかった。もう少し肩の力を抜いたらと言われた。それは、自分でもわかってる。自分が水中で仰向けに浮けないのは、そのせいかもしれない。それはさておき、谷間に来れて安堵してい…
ネガティブに惹かれるのは、そこに人の本質が見えるからだろうか。煌びやかな言葉が眩しい。画面の向こうには、ネガティブが入る余地のない時が流れているのだろうか。たぶん違う。どちらを切り取っているか、だけだ。きっとその人にしかない泥くささがある…
どうして奔走しているのだろうと、思いながらも奔走していた。何らかの集団に身を置くと、自分にできることを見つけて、つい動いてしまうように長年プログラムされてしまっている。物を入れ替えたり、まとめたり、手が届いていないところを埋めに行ったり。…
深夜1時に目が覚めたので、この時間に他にも起きている人はいるのかとカーテンを開けると、少し離れた家の明かりが見えた。電気を消し忘れただけかもしれないが、それでも気持ちが和らいだ。また別の窓の前に立った。外は暗く、昼に見えていたものが見えない…
ナーバスだった。十五夜に"すすき"を供えた。根本付近から取ってきて、残った部分を野ざらしにしておいたら、からからに乾いていた。剪定ばさみで切って、袋に入れる。庭のオリーブの木から「ひこばえ」が出ていたので切っていたところ、すすきがなくなって…
お題「海外旅行で経験したトラブル」 海外旅行は、日本語が話せる現地の方が一緒の条件を選びがちです。そのおかげか、今まで大きなトラブルはなかったです。以下、インドネシア旅行時のトラブルです。・浴室のお湯が出ない何とか英語を並べてフロントに電話…
自分で選んだ道について、嘆いたり不満を言ったりするのは、よくないと思ってきた。とはいえ、時にはこぼすのであるが、どこか「いけないこと」をしている感がぬぐえなかった。そのルーツは何かと考えたところ、母の言葉をもとに自分でつくった価値観であっ…
疲れたら休む、疲れる前に休む、ようにはしているが、どうにも調子がよくないときはある。先日子どもが熱を出したけれど、家から出なかったのが、とんでもなく久しぶりであった。子どもは動きたいものとはいえ、あまりに動くのも、心身がついていかないだろ…
急に涼しくなって、慌てて長袖などを引っぱり出してきた。土手には彼岸花、夜風に乗って聞こえる祭りの太鼓と鐘の音。秋はひっそりと訪れていたのだった。眠くて寒い朝、自分を生き返らせるのは、あたたかいスープである。スープは偉大だ。母校に行く機会が…