語る、また語る

いつもにプラスα

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くるおしい朝

学生のころ、試験の前に、たまに徹夜などをしていたものだ。

夏か冬かは忘れたけれど、一人暮らしの古いマンションで一人、その日も私は徹夜の覚悟であった。

深夜二時、そろそろ集中力も切れてきて、もう寝たいけれど、まだ課題が終わらなくて、寝たら単位を落とすから寝れないと思っていたところ、二つ折りの丸っこい携帯電話が鳴った。

同じ学科の会ったら話すくらいの同級生からだった。

課題の進み具合などを話し、どういう流れからだったのか、彼は次のように言った。

好きなのは、君だよ。


私がけしかけたような気もする。

自分から投げたボールが、予想もしなかった方向から返ってきたことに焦り、しどろもどろになりながら電話を切った。

私も変わった人だ。でも「君」を用いてきた彼も、ちょっと変わった人だった。


あのとき私は本気と取ったけれど、冗談だったかもしれないではないか、何を取り乱していたのだろう。でも冗談なら冗談と言うだろうから、本気だったということか。

そして気まずくもならず、かといって何かあるわけでもなく、卒業を迎えた。


今、彼が何をしているかも知らない。

彼を思い出したら、もう会えないかもしれない人たちの顔が次々と浮かんできた。

くるおしい朝だった。