2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
師走の別れ際の言葉、「今年もありがとうございました。来年もまたよろしくお願いします」に対して「こちらこそありがとうございました。来年もよろしくお願いします」と返し、数日したらまた「今年もよろしくお願いします」と言い合っていた。年が明けない…
頬をかすめる風は冷たく、四方八方に送られた日差しはあたたかい。冷たいのにあたたかいというこの矛盾に、たとえば知らないだろうけれどと前置きした作家を相手が知っていたときのような気持ちになる。いつか使うかもしれないと取っておいても、そのいつか…
端末というものは、限りある画面に情報をおさめようとしているためか、単なるデザインかと思ったらアイコンだったということがよくあるもので、数年前にPodcast内の番組をどうやって検索したらいいかわからずに、トップに出ている番組だけなら少なすぎると真…
理不尽がありながらもそれを理不尽とも解せずに、居場所が限定されてしまうことは子どものころにもある。自分の頭だけで考えていても埒が明かず、かといって周りへ相談することも知らないからできずに、ただ塞ぎ込んでいるのは若者にとってもやり切れないし…
人には大なり小なり興味・関心・問題意識があって、それに動かされている部分がある。そして私はそれらなくして、何となく見る、とか何となく聞くことが、あまりできない。行動する前にあることないことをつい考えてしまうし、できるだけ自分に合ったものを…
気に障った一言を許せるのは、その相手に対して諦められるかどうかというのがあると思う。嫌いになるとかではなく、「そういう人だ」とか「何か事情があった」とか慮る。すぐに鎮静することもあれば、ふと思い出して当時の気持ちがよみがえることもある。許…
焼き菓子をつくった。ビニール袋に入れた小麦粉、砂糖、卵黄とバターをこねて棒状にし、冷凍庫で冷やしてから、包丁で切ってオーブントースターで焼くだけだ。焼きはじめてしばらくすると、バターの焼けた香りが部屋に広がっていく。焼きたての菓子は、ほん…
両手を広げて待ち構えている一団に、手を伸ばして飛び込んだ。通っていた園には夏に大型施設のプールを訪れる行事があり、そのとき私は五歳だった。深い水深を補うために体育用のマット一枚分くらいのプールフロアが敷かれた水面はちらちらと赤く、真ん中に…
個人的なことなら、良いも悪いも決めるのは自分であり、良いも悪いも決めずにいてもまた陽が昇っていく幾つものことがある。少しのものを除いて、良いも悪いも定まらないことをそのままに、真っ逆さまに降下するわけでも、有頂天になるわけでもなく、どちら…
やらなくて悔やんだことをたとえやったところで、今と同じ未来にはならないかもしれないことを前提にして、それでも過去の自分はやらなかった方を選ぶだろうか。どちらかを選ばなければならないとき、どちらもは選べず、どちらかは選ばずに残すことになる。…
十歳になったくらいのころに一人芝居をしていた。誰に見せるわけでもなく家で一人で。ストーリーはおそらく、主人公である"悩める自分"が"誰か"に相談をするというものだったと思う。台本などなく思ったことをそのまま言葉にする発声だけの芝居だった。いや…