語る、また語る

いつもにプラスα

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2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

近いから少し後ずさる

文字は読む人の速度で読める。意味を考えようと思ったら、戻っても読める。音声配信は聞く人の速度を気にしない。聞く人の考えが追いついていなくても、話す人は話し続ける。聞く人が考えたいときは一時停止する。前の話を聞きたくても、書き起こさなければ…

誰かの声を聞き分ける

何人かでやっているラジオ番組を聞いていると、はじめのうちはどれが誰の声なのかまったくわからない。名前もおぼつかないから、こういう声の人やこういう声の人がいて、どうやら今まで話していた人とは別の人に、話している人が変わったようである。しかし…

ぶっきらぼうなようで

ざっくりした生地の靴下に足を通す。足がつつまれ、あたたかさが封じ込められていく。足が生地にくるまれて守られている。厚手の外衣をはおり外に出る。風は肌にまだやさしく、服と服にはさまれている気体が体を包んでいる。一本調子の言葉はぶっきらぼうな…

手に寄られ

二センチほどになった鉛筆は、鉛筆を回す小型の削り器では削れない。カッターナイフを手に、慎重にカッターナイフを動かし、やがて黒鉛が現れる。鉛筆削り器で量産される同じ鉛筆の先ではない、一つしかない形ができあがる。小さな鉛筆を削ったあとで、自分…

柿を干す

渋柿の皮を取り、ビニールひもでどうにかこうにか干せるような形に結ぶ。物干しにかけたときにこちらに二つ向こうに二つになるようにしてから、熱湯に五秒くぐらせて、ベランダにつるす。ここまで一時間かからない。えらい大きい袋に入れてくれたものだから…

声はとどまり文字は待つ

人の声というものを何回も聞いていると、本人の声がないところでも、自分の中でその人の声を再現できるようになる。まったく同じではなく、あくまで似たような声だろうけれども。図書館でおこなわれている絵本の読み聞かせに子どもと何年も行っているが、そ…

テーブルにみかん

テーブルにみかんが置かれている。橙の皮をかぶっていて、不ぞろいなみかんである。ちぎられた欠片もそのままにいくつかある。暖色がもたらしているのか、身体の芯にゆっくり灯がともる。柑橘の香りをふりまき、みかんが空間をプロデュースしている。小皿に…