舞台であろうと体育館であろうと、舞台照明というものは熱い。ただでさえ緊張する演奏に、照明をも当てられるのだから困ってしまう。とはいえ、そういうものなのだから、額に汗を滲ませながらも歌うしかない。
普段の音楽室にはない環境、最後まで慣れることはなかった。不安や高揚をよそに、対角の上部からレーザーのように斜めに走る照明に目を落とす。舞っている埃が見える。絶え間なく運動している。演奏のことを考えなければと思うほど、舞う埃に目が行ってしまう。今から歌おうというときに何を考えているのだろう。
演奏に臨む部員たちと指揮者の顔と、暗い客席と、照明に舞う埃を覚えている。