冬の装いだった山に、淡い綿菓子のようなものが点々とあって、それが桜だとわかって春だと思った。若葉の色をした一体があるかと思えばしっかりとした緑もあって、その模様にしばし見入る。
水仙は花をひそめ、チューリップも徐々に見納め、つつじが一つ二つが開花している。
谷川俊太郎の詩で「朝のリレー」という詩があるが、順に咲いていく花を追っていると、それもまさにリレーであった。
昼の日差しの高さに眉間にしわが寄る。しかしそれでも冷房いらずの気温と、朝と晩の涼しさとひんやりと吹く風に、季節にある自分の立ち位置をたしかにする。