社会にはいろいろなルールがあります。
では、なぜルールがあるかというと、
ひとりひとりの自由のためであり、
欲望の実現のためです。
たとえば交通規制を思い出してください。どんなに急いでいても前の信号が赤ならば必ず止まる。一見すると「早く目的地に着きたい」という欲望は制限されていますが、そうした欲望を多少抑制することによって、誰もが安全に確実に、事故に合うよりはずっと早く目的地にたどりつくことができるのです。
どんな社会にも大体共通して
大事に考えられているルールは、
「盗むな、殺すな」という原則。
自分の気分しだいで勝手に
人を殺していいということになると、
今度は自分がいつ殺されるか
わからないということになってしまう。
ルールは、つまるところ
自分のため(個人のため)にあるんですね。
無意味に人を精神的、身体的にダメージを与えないようにするということは、自分の身を守る、自分自身が安心して生活できることに直結しているのです。
人と人でも、
たとえば気が合わない人を攻撃すれば、
ますますストレス過剰な環境をつくり、
自分が攻撃されるリスクを
大きくすることになりまねません。
一方で、露骨に「無視する」というのも、
攻撃になってしまいます。
「わたしはあなたを
攻撃しませんよ」の表明として、
最低限の「あいさつ」は、
しておいたほうがいいということ。
要は、「親しさか、敵対か」の二者択一ではなく、態度保留という真ん中の道を選ぶということです。
態度保留、
自分を守るためにも、
いろいろな人と接するときの
かしこいふるまいとして、
身につけたいですね。
参考文献 菅野仁 著「友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える」、ちくまプリマ―新書、2008年