語る、また語る

話したいことを書いています。

読書

消耗しない人間関係のために「やりすごす」~菅野仁『友だち幻想』より~

学校や職場、地域など、人の集まるところに身を置くと、自分とは違う振る舞い方、考え方や感じ方をする人とも、いっしょに過ごすことになります。したがって、「気の合わない人」と一緒にいる作法を真剣に考えなければならないというのが、この本を通じての…

やさしくて、尖っている

詩人の吉野弘さんは、「祝婚歌」や「奈々子に」といったやさしい作品がよく知られているイメージだ。*1たとえば、この「歩く」なんてのも、清らかな情景にあふれた、言葉がキラリと光るような詩で、わたしは気に入っている。 太陽を睫ではじきながら歩く太陽…

子どもたちへ、大人たちへ~吉野弘「奈々子に」~

子育てをしていると、自分は現役ではあるのだけれど、一方でもう引き渡す側でもあるのだと感じることが多々ある。子どもたちのエネルギーがすごすぎて、冗談ではなく、命を削って、彼らと過ごしている気がしてくる。そんな子どもたちに、いつか読ませたい詩…

ただそばにいるだけで~吉野弘「犬とサラリーマン」~

何も話さなくてもいい。ただそばいるだけでいい。読み終えたあとに、少しのぬくもりと、哀愁を感じる詩がある。吉野弘さんの「犬とサラリーマン」だ。 また来た。ビスケットを投げたが やっぱり食わない。黙って僕を見つめている。 始めて来たとき 魚の骨を…

詩との戯れ~吉野弘「祝婚歌」~

30代半ばになって、詩を読むようになった。詩は短い時間で読むことができ、何かしらのエッセンスのようなものをサクッと得ることができる。たまに、何を表わしているのか、まったくわからないものもある。でも、そのときは「わからない」こと自体を楽しむ。…

あの賞は、励ましだったのかもしれない

中学生のとき、校内の読書感想文コンクールに入選し、毎年度末に生徒会が発行している冊子に載ったことがある。わたしは、出来がよかったから選ばれたとばかり思っていたけれど、本当にそうだったのだろうか。先日、読んだ本について書いたが*1、そこで意味…

親も先生もスーパーマンではない~小池昌代「わたしたちはまだ、その場所を知らない」~

親も先生も、完璧ではないと知ったのはいつだっただろうか。 小池昌代さんの「わたしたちはまだ、その場所を知らない」を読んで、そんなことを思った。 わたしたちはまだ、その場所を知らない 作者:小池 昌代 河出書房新社 Amazon 国語の教師である女性の坂…

心の覗き見~魚住陽子さん、おすすめ本2冊~

夏のおわりにかけて、作家、魚住陽子さんの著書を読んでいた。発表された作品は、決して多くはないけれど、一つひとつに重みを感じた。11歳の娘と夫を捨てて、男の元へ逃げる40歳になる妻の家で過ごす最後の時間を濃密に描いた「敦子の二時間」。冷静を装お…

一人の日々から感じられる、ほのかなぬくもり~稲葉真弓さん、おすすめ本2冊~

1995年、今から27年前の本だった。長いこと、書庫に保管されていたのだろう。本を開くと、古い紙のにおいがした。いやな感じはしなかったから、わたしは思わず鼻を本に近づけて、においを嗅いだ。図書館で、稲葉真弓さんの本をいくつか借りてきた。一人の女…

本のなかに自分がいた~朝倉かすみさん、おすすめ本3冊~

朝倉かすみ さんは、小説を書き始めたのが31歳で、デビューが43歳だという。10代のうちに彗星のごとく現れる作家さんとはまた違うが、歳を重ねているからこその安定感のようなものがあると感じる。けっこう現実味をもって、ストーリーが迫ってくる。でもそれ…

読む本はどうやって選びますか?

本を選ぶのに時間がかかる。むしろ、読むよりも選ぶことに情熱を注いでいるかのように思えてくる。これといってよく読む作家さんがいないということもあるのだろう。本屋さんに行き、タイトルに惹かれて手に取り、帯の紹介文や推薦文を読んでも、まずそこで…

いい人にならなくていっか~益田ミリ「永遠のおでかけ」~

私は、いい人でありたいと思うあまり、怒りや哀しみを感じても、笑おうとしてしまうところがあった。いつも笑っている人が、いい人なのかと言われると、何か違う気もするが、外面は努めてそのようにふるまっていた。だから、人あたりがいいと言われたことも…

役に立つとか立たないじゃなくて、自分を認める~稲垣えみ子「寂しい生活」~

自分の中でなんとなく思っていたけれど、上手く言葉にできなかったことが、本に書かれていた。読んだのは、稲垣えみ子さんの「寂しい生活」。(内容に触れています。)タイトルから、暗い本なのではないかと思うかもしれないが、とても前向きな本である。著…

切なさの正体~益田ミリ「そう書いてあった」~

この切なさは何だろうと、しばらく考えていた。益田ミリさんのエッセイ集「そう書いてあった」を読んだ。印象に残ったエピソードが二つあった。まずは、黄色いワーゲンについて。著者が小学生のときのルールで、一日に黄色いワーゲンを三台見られれば、良い…