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自滅とストレスから解放されるためには、自意識をモチベーションにしない

『自意識と創り出す思考』、
第4章の目に見えない構造と
第6章の内なる脅威では、
嫌な思い込みを打ち消すための
理想を抱くことは、
自滅とストレスを生むと書かれている。

まず、自滅について、これは、
「緊張は解消に向かう」構造に関係する。

弓矢のように、
弓に緊張が十分に与えられると、
矢は的に向かって飛び、
緊張が足りないと、手元に落ちる原理だ。
人生を構築するために、
この原理を活用しようと説かれている。

緊張構造は、創り出したい
ビジョンを明確にし、
ビジョンに対する現在の居場所を
明確にすることでつくられるとのこと。

しかし、「葛藤構造」という競合する
別の構造があると緊張構造は使えない。

それが、理想と嫌な思い込みの葛藤。

葛藤構造は、次のように述べられる。

部屋の真ん中に自分がいるとして、
「理想」と書かれた正面の壁と
「嫌な思い込み」と書かれた反対側の壁に
それぞれ腰のまわりにゴムバンドを
巻きつけて結ぶ。
これら二つが緊張システムの成り立ちだ。

理想に到達したと思ったときには
正面のゴムバンドは緩み、
後ろの嫌な思い込みのゴムバンドは
張っているので、理想に近づけば近づくほど
嫌な思い込みが意識させられる。
この構造の中で理想を維持するのは難しく、
やがて逆方向に引っ張られ、理想から遠ざかる。
反対側に行きつくと嫌な思い込みで
自分自身を打ちのめした状態になるので、
今度はまた理想に向かって歩んでいく。

この構造の中にいる限り、
理想を達成したと思っても、
元に戻ってしまうということらしい。
自分で構造を変えない限り疲弊していく
だろうから、自滅としてみた。

次の引用は、嫌な思い込みが「自分は敗者だ」
だったときの状態を説明している。

敗者という思い込みが作り出す理想は勝者だ。そこで勝者になることを目指し始める。(中略)
 ここで重要なのは、何に動機付けられているかだ。なぜ「勝者になりたい」という理想を抱くのか。それは、「なぜ大切なことを成し遂げたいのか」という問いとは違う。前者は自意識についての問いだ。後者のフォーカスは成果にある一方で、前者のフォーカスは自分自身にある。自分自身をどう見ているか、他者からどう見られているか。どうやって期待に応え、見せ場を作り、特別な存在として認められるか。そこにある関心は、いかにして力と注目を集め、いかにして自分は敗者だという思い込みを打ち消すかだ。


何になりたいかではなく、
何をしたいかで職業を選べと
聞いたことがある。

何になりたいかというのが、
自意識へのフォーカスなのに対して、
何をしたいかは、成果へのフォーカスに
通じるように思う。

仕事を始めたころは、
仕事を通して何をしたいかに
フォーカスできていたのに、
いつからか、何になりたいのかしか
考えられなくなっていた自分である。


そして、理想と嫌な思い込みの葛藤は、
慢性ストレスになるとあった。

「自分はこうでなければならない」と
「自分は実はこうなのだ」との葛藤は、
自分が絶対なれないものに
ならなくてはいけないことになるからだ。

この自意識の問題によるストレスには
出口がなく、身体へのダメージは計り知れない。


わたしが仕事で感じていた
ストレスの半分は、
まさしくこのような葛藤によるストレスだ。
しかも慢性の。

繰り返しになるけれど、
だからこそ自意識ではなく、
創り出したい成果へのフォーカスが
求められるのだが、30年以上、
強い自意識と生きてきた自分には、
根気のいる転換だと思う。

自意識を保つため苦しまぬよう、
わたしのもがきは続く。

参考文献  ロバート・フリッツ、ウェイン・S・アンダーセン著『自意識と創り出す思考』、Evolving、2018年