ある日、バナナをパンにのせてほしいと
子どもに言われた。
何、パンにバナナだって。
そんな文化はないのだけれど。
パンといえば、バターかとろけるチーズ。
バナナといえば、そのままかヨーグルトでは?
ひとまずバナナを輪切りにして、
縦3個横3個合わせて9個をパンにのせて渡すと、
もう一枚パンを重ねてかぶりついた。
おいしいらしい。
同じようにやってみる。
量は食べられる気がしなかったので、
バナナをのせたら、パンをふたつ折りにして持つ。
上品のかけらもない。
口へ運ぶ。
噛む。
「!!!」
バナナの潤いがパンを包み込み、
甘さと旨味が密度高めに閉じ込められている。
とそこへバナナの香りが静かに駆けていった。
バナナとパンは、合うではないか。
フルーツサンド食わず嫌い
していたけれど、フルーツサンドとは、
やはりおいしいのかもしれない。
輪切りのバナナをパンのせて食べたが最後、
私の価値観はひっくり返った。
自分の食べものの価値観なんて、
もうほとんど確立されたと思っていたが、
まだまだわからないものである。
バナナをのせたパンの味のような
衝撃があったりなかったりしながら、
自分のいろいろな価値観は、
これからも変わっていくのだろう。
覚悟しておこう。