語る、また語る

いつもにプラスα

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時空

暑かったころには疎ましかった太陽も、
寒くなるとありがたいものだ。

できれば涼しい午前中に動いていたのに、
少し厚着をして気温が高いうちに
外出しようとしている、
何と都合のいいことであろう。

"つば"の大きい帽子と
薄手の日よけの手袋はしまわれて、
毛糸みたいな糸で編まれた帽子、
同じような素材の手袋、
襟巻きが幅を利かせている。

毛糸の帽子は恰好だけかと侮っていたが、
先日の寒さでかぶってみたら、
この上なくあたたかかった。


隣の校区まで自転車を走らせていたら、
樹齢千年以上の巨木があった。

山と田に囲まれた集落のなかに、
ふっと立っていた。

千年前といったら1023年、平安の世である。
(帰ってから、高校のときの日本史の
便覧を引っぱり出してきた)

高さは二十メートル、
県の天然記念物らしい。

真下に立ってみるものの、
首をかなり後ろにやらないと
視界に収まらない。
高層ビルを見上げるときのようだった。

上部は既に枯れていて葉もなく、
白っぽい幹だけが空に向かっている。

それらはゆるやかにうねっていて、
炎のゆらめきを思わせた。

枝の間に青空と雲が挟まれていた。

雲の動きが早く、雲が動いているのか、
この木自体がそこを動いているのか、
わからなくなった。

私が木、もしくは木が私になった
そんな感じであった。

きっとタイムスリップやワープが
起こるとしたら、こういうときだ。

我に返ると、ちゃんと乗ってきた
自転車が後ろにとまっていた。