長いこと、
空を眺めていなかった。
波の音も水平線も無視した。
草木には気づかず、
花は冬には咲かないと思ってた。
雨は、そこかしこに
絵の具を重ねるように降っている。
濃緑になった小庭。
静かだった。
水滴が地に落ちて弾けている。
目に映るものは、
こんなにもたくさんの色を
もっていたのだろうか。
わたしに見えなかっただけ
なのだろうか。
見る自分の、目が変わったのだろうか。
歳とともに、自然が好きになったり、
涙もろくなったりするあれだろうか。
目の前に広がるのは、
色を帯びた日常で、
自分の心が変わったのだと知った。