語る、また語る

いつもにプラスα

 本サイトのリンクから商品を購入すると、本サイトに収益の一部が還元されます。

綺麗になっていく過去と

20年。

過去が美化されるのには、
このくらい必要なのかもしれない。

高校のとき、楽しかったね。

友人からの年賀状に書かれていた
メッセージである。

10年前にやりとりした手紙には、
「高校のときは毎日怒られてばかりで、
何度も辞めたいと思って大変だったね」と
書かれていたのに。

彼女とは同級生で、
高校時代は同じコーラス部に入っていた。
そりゃまあハードな。

GWや長期休みは、ほぼ毎日部活、
コンクール前になると、
朝練はもちろん、昼練もあった。

昼練は、お昼ごはんを食べたあとの
数十分の練習である。

どんだけ練習してるんだよと、
ツッコみたくなってくる。

指導してくださる顧問の先生が、
県内にとどまらず、全国にも名の知れた、
手腕の持ち主だったというのが大きい。

全国の合唱コンクール
審査員として呼ばれたこともあり、
赴任する学校を必ず県の強豪校に
育て上げるという強者であった。

ずっと立ちっぱなしで、
ときには怒号が飛んできて、
脚もいたいし、心もくじけそうになる、
まあ昭和的な指導。

地方大会は9月初旬開催で、
受験生でもある三年生も出場するのが
恒例だったため、
わたしもその年賀状をくれた彼女も、
高校三年生の夏休みは、
部活に捧げることになってしまった。

夏を制するものは、受験を制すなんて、
どこ吹く風である。
何で続けていたのか不思議だが、
おそらくやけになっていたのだろう。

若さというものは、おそろしい。

それでも、わたしも彼女も、
センター試験をくぐり抜け、
自分の希望する大学に
なんとか滑り込んだのだから、
結果オーライだった。

部活が大変だった、辞めたかったと
振り返っていたのが、
渦中にあったときから10年後。

楽しかったと感じたのが、
そのときから
20年くらいたった、今だ。

お互いそれなりに
いろいろ経験もしての、20年である。

過去は遠くなればなるほど、
綺麗に見えるとはよく言ったものだ。

それは自分が「受け入れられた」という
過去だけだろうけど。
一生消化されない、
思い出したくない過去はまた別のはなしだ。

20年したら56歳。

これまでの20年より、
さらに山あり谷ありになりそうである。

そのとき、今はどう映るのだろう。