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スピッツ アルバム「三日月ロック」~欠けながらも光る~

今になってスピッツのアルバム、
「三日月ロック」を聴いている。

もともとは、「けもの道」が好きで、
その音源が欲しくて購入した。

この「三日月ロック」は、
タイトルにある三日月がそうであるように、
欠けがテーマだと自分は捉えている。

そして、歌詞にも欠けの要素が
散りばめられていると思っている。

研がない強がり 嘘で塗り固めた部屋
1曲目「夜を駆ける」

輝くための偽物さ だから俺は飛べる
5曲目「ババロア」


何かと取り繕ってしまう、
そのままではいられない危うさ。
こういう歌詞はひやりとする。

 

あたり前過ぎる人生を 切り貼りしてこのざま
4曲目「ミカンズのテーマ」

尋かれてもいないのに 秘密の安売り
6曲目「ローテク・ローマティカ」


自分を悲観することは、誰しもある。
しかし一曲通して聴くと、
完全には悲観していないのが、
スピッツなのだ。

悲観しても悲観した自分を見捨てない。

おかしくて 吹き出しそうな時のいたずらに
導かれ 僕らは行く 翼も無いのに
8曲目「海を見に行こう」

だめだな ゴミだな さりげない言葉で溶ける心
9曲目「エスカルゴ」

ガーベラ 都合よく はばたけたなら ここにいなかった
11曲目「ガーベラ」


翼も無いし(理想に届かない
比喩だと思う)、心はすぐに溶けるし、
都合よく振舞えないけれど、
だからこそできることがあるという三曲。


終盤、"ゆううつな迷い子をなでるように
風は吹き抜けてく 旅の途中"
12曲目「旅の途中」)と歌われ、
迷い子たちも等しく風に
撫でられたところで、「けもの道」で
見事なフィナーレへ。


ところで、この「三日月ロック」の
収録曲において、私の中での別格が
「水色の街」だと、最後に述べておきたい。

会いたくて 今すぐ 間違えたステップで
水色のあの街へ

会いたくて 今すぐ 泥まみれの靴で
水色のあの街へ


「会いたい」という人間らしい
気持ちも良いし、"間違えたステップ"や
"泥まみれの靴"といった、誤ること、
洗練されていないという欠けの象徴が、
極上である。

この部分だけで、
もうこの曲にひれ伏したい。


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