たしかあれは2月の半ば、
草むらに菜の花が咲き始めたところに、
わずかばかりの雪が降った。
春に冬が戻ってきたような、
こんなこともあるのだと意外だった。
すぐに溶けてそれから散歩をすると、
実を育てているきゃべつのような
ブロッコリーのようなものが
そこかしこにあった。
それもそのはず、キャベツもブロッコリーも
アブラナ科アブラナ属なのだそうだ。
3月も日がすすみ、
あたりは黄色い菜の花であふれている。
つくったばかりの総菜が冷めることが、
少しやりきれない。
取り分けられなかったものは、
蓋をされた鍋に収まったまま
音もなくあたたかさを失う。
浴そうのお湯も、人がいなくなると
言葉もなくお湯でなくなる。
熱が移動しているだけとはいえ、
もったいないと思いながら、
しばし鍋や浴そうを見つめてしまう。