満たされない、何かが足りない。
そう思っていたのは、17歳のころ。
いや、自分は何がほしいか、
わかっていた。
でも、手に入らない。
そんな置き場のない石ころみたいな感情を
抱えきれなくなりそうになったときは、
いつも音楽を聴いた。
音楽を聴いていると、少し楽になれた。
今聴いてみると、粗い。
でもそれがかえって当時は心地よかった。
きれいに整っているより、
ささくれだっている方が安心した。
その音楽に自分を重ねて、
きっと私は心の中で叫んでいた。
―
the youthは、仙台出身の4人組バンドだ。
たぶん知ったのは、
当時読んでいた音楽雑誌がきっかけだ。
「WHAT's IN?」をいつも読んでいた。
高校の近くの市立図書館にあったからだ。
部活がない日や、テスト期間中で
学校が早く終わる日には、
よくその図書館に行った。
私の地元は坂が多く、
その図書館も少し寂れた(ように見えた)
商店街を抜けた後、わりと急な坂を上った
ところにあった。
これまた高校の近くにあった
中ぐらいのショッピングモールに
入っている書店でも読めたが、
立ち読みだから少し気まずいし、
何より立ちっぱなしはつらい。
いつも読むのは最新号だった。
図書館はだいたい最新号は貸出禁止。
私は最新号の読みたさで図書館に行った。
買えばよかったのかもしれないが、
なんだろう、読みに行くという行為が
楽しかったのだろうか。
「WHAT's IN?」には、
数多くのアーティストが
その月にどんな活動をするかが
書かれているページがあった。
今調べてみると、
TOP BOAD200というコンテンツで、
200組のアーティストの情報が
掲載されていたらしい。
私はこれを読んで、
新しいアーティストを知ったり、
好きなアーティストの動向を把握した。
家にインターネットがなかった時代である。
紙媒体である雑誌は、貴重な情報源であった。
the youthもそこに載っていた。
それからしばらくして、
NHKのポップジャムに出演。
そこで歌われたのが、
この「言葉にできない」だった。
カメラの向こうの視聴者を越えて、
そのもっとずっと遠くに、
まっすぐな眼差しを向けて歌う
ボーカルの方の表情を
今でもなんとなく覚えている。
ポップジャムはいつも録画していたが
the youthの出演回は、保存版となった。
繰り返し、繰り返し観た。
CDは買わなかったけれど、
その歌っている映像を観るだけで、
満足だったんだろう。
そのビデオテープ、
残っているなら、また観てみたいな。