幼子は私の腹に耳を置き、
音がすると伝えてきた。
次は左手に耳を置き、
また音がしたと笑った。
彼は、体中から音がすると
感じているようである。
それならと心臓の上に誘ってみた。
新手の戯れに思えた。
人の体は、休むことなく働いている。
血が流れている、何かが運ばれている、
信号がやりとりされている。
細かいことが四六時中起こっている。
音は聞こえてこないけれど、
聞こえてもおかしくないだろう。
どんな擬音をあてはめようか。
同じ人間なら同じ音がするかもしれないが、
幼子は、違いがわかりそうな顔をしていた。