語る、また語る

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計算カードとむかしの仕事のこと

小学一年生の長男の宿題は、
プリント1枚、音読、計算カードが
お決まりである。

計算カードは時間を測らなければならず、
平日は、毎夜時計とにらめっこをしている。

しかも1分30秒以内に終えないと、
計算カードのテストで合格できないらしい。

いつも多少のわずらわしさを
感じていたのだけと、
ふとわたしもやってみようと思い立った。
長男からやってほしいと
頼まれたのだったかもしれない。

一年生なので、
一桁の足し算と引き算なのだが、
やってみると思ったよりむずかしかった。

まず、1分30秒以内を切ろうとすると、
おのずと早口で計算式と答えを
言う必要がある。

普段そんなに早く話すことってないから、
噛む、つまる、止まるでスムーズにいかない。

そして驚いたことに、
同じことを繰り返しているからか、
あるとき、頭のうまく回転しない
感覚がやってきた。

単純な繰り上がりの計算も、
あれ、と一瞬フリーズするのだ。

カードのめくり方にもコツがあるのか、
何回もカードをつかみ損ねてしまい、
なかなか次の問題にたどりつけないという
もどかしさもあった。

長男もやりながら
同じような様子が見られたが、
そういうことだったのだ。

たかが計算カードではなかったのだ。

わたしは、毎日計算カードをめくる長男に
敬意とねぎらいを示した。


さて、前置きが長くなってしまったが、
要するによく言われることではあるが、
「やってみなければ
わからないことがある」ということなのだ。

ここで、突然だが、わたしが過去にしていた
仕事の話をしたいと思う。

わたしは、いわゆるメーカーに勤めており、
ものをつくるためのデザインをする部門にいた。

地方の中小企業で、
規格化、標準化は道半ば、
常につくる側との
コミュニケーションをとりながら、
図面というものをつくっていった。

よく先輩方から言われていたのが、
「わからなかったら、現場に行け」と
いうことだった。

あっちとこっちで、
ああでもない、こうでもないと
もめていたところで、何も解決しない。

実際に「もの」を見た方が速いのである。

もちろん、
「もの」を実際につくったことがあれば、
またそれは強みになる。

いくら製作する方の視点に立って、
図面を描いたとしても、
自分の手を動かしてものをつくったことが、
あるのとないのでは、もっている情報量が
全然違うだろう。

何ができるかできないのか、
どこまでならできるのかなど、
細部を知っているほど
デザインの幅は広がるのだ。

わたしは現場の経験なしに、
いきなりデザインする側に
まわったものだから、
はじめのころは、よく現場の方々から
「こんなものつくれるか!」*1
叱咤激励をうけていたっけ。

今では新入社員は現場での研修が
必須になったようだが、
十数年前からそうしてくれていたら。


いやはや、むかしの仕事のことは、
なかなかまとまった言葉なりませんね。
おそらく体系化しないまま、
がむしゃらに仕事をしていたんでしょうね。

何やらわかりにくかったかもしれませんが、
とにかく、何かやってみたり、
実際にどこかに行ってみたりするのは、
ただ机やパソコンに向かっているよりは、
得るものは大きいということです。

そんなことを、
仕事をやめた今になっても、
長男と計算カードをしながら
考えたのでありました。

*1:もっと丁寧な言い方です。